
電車をデザインする仕事: ななつ星、九州新幹線はこうして生まれた! (新潮文庫)
- 作者:鋭治, 水戸岡
- 発売日: 2016/10/28
- メディア: 文庫
一般的にデザインとは
そもそもはラテン語の「designare(デシグナーレ)」から来ている。「伝えることや、計画を記号で表す」という意味。 つまり、自分の意思を伝える・あるいは自分の考えを出すこと。
本当に優れたデザインとは
「売らんがためのデザインではなく、使うためのデザイン、『美しい』ではなくて、『正しい』デザイン」 それらがひとつひとつ積み重なってはじめてみんなが納得し、感動するデザインができる。
「正しいデザイン」には、広い視野で見る・考えることが大切。多角的に大きな観点で全体を見渡すことによって、「正しいデザイン」のガイドラインが描けるようになる。
デザイナーは「思い」や「考え」を現実的にカタチにするのが仕事。「考え」をカタチにする作業は技術である。そこには知力・気力・体力がベースとなり、さらに情熱というスパイスが加わって正しいデザインが生まれる。
デザイン力を身につけるためには、五感
デザインはデザイナーの感性で創造するものではない。 自分がこれまで体験や楽しかったこと、心に残っている思い出や多くの人からのアイディアを具現化すること。ゆたかな感動をたくさん重ねてきた人には、ゆたかなアイディアがあり、物事を考え抜く力が備わっている。 そのためには五感が大事になる。五感を磨きながら、多くの人が思っていることや、考えていることを可能な限り感じ取り、それを正しく翻訳するのが仕事。
五感はフル活用して、常に考える意識を持つこと。(「周りに見えているのは何だろう?」「これには何の意味があるんだろう?」)
五感は、環境と好奇心によって育まれる。
環境
素晴らしい環境はそこにいる人達の意識を変えてくれる。 活気がない街は自分たちが住んでいる環境に対して意識が低いが、逆に活気ある街は意識が高い。環境をつくるのもデザイナーの仕事でもある。
好奇心
色々なことに対して興味が持てるようになれば、自分自身の五感の種となる「映し込み」が上手になっていく。 それにより感性のベースが構築される。これがないと、「思い」や「考え」といった思考のベースが作られない。
デザイン力を身につけるためには、人としての作法
ドーンデザイン研究所では...
① 朝8時に1時間かけて全員で掃除
掃除が上手というのは、人としてだけでなくデザイナーとしても重要なことである。掃除をすることで、物を大事にする気持ちが芽生える。建築の素材の勉強にもなる。
② お茶を淹れる
お茶を淹れるのは実は大変な作業で、新入社員研修といっても過言ではなくぐらい大切。
新人には淹れたお茶を自分でも飲んでみるように、お客が出されたお茶を美味しく飲んでくれたかも確認するよう、丁寧に教えている。
③ お弁当を用意させる
「こういう人でこのぐらいの年齢だよ」とだけ話して、お弁当を用意させている。お客のことを考えて、好みを解釈し、いかに良い弁当を選び、美味しいお昼にできるか。これが出来ない者に良いデザインは出来ない。
それらがデザインを身につける前に必要な人としての作法を身につけることで、相手の気持ちを理解することが出来る。お客との間に尊敬と信頼が生まれ、それがデザイナーの五感と脳を動かすエンジンになる。
デザイナーの仕事における重要な3つの要素
比較しない
世の中にはデザイナーの数だけ様々なデザインが存在し、それらは決して比較できない。そのデザインにはそのデザインの良さがあって、世の中で言われる「優秀なデザイン」というのは、ある規則的な一部を切り取った断面にすぎない。 作る前には色々なデザインを参考にすることがあるが、いざ作るときにはそれをやめる。自分の持ち味で勝負する。そうしないと、自分の得意技が出せなくなるだけでなく、モノづくりにおける自分の軸や志向がズレてデザインが散漫になる。
不都合を受け入れる
受け入れれば受け入れるほど、スキルは伸びる。難しいと思う仕事は、結果的に成長する。
対立構造をつくらない
日本人はこれまでお互いを理解し、最適な答えを見つけるため、話し合ってきて無意味な対立を避けてきた。自分の考えや都合だけを押し付けて論破するのではなく、日本人らしい知恵ある談合が大事。
51対49のデザインの法則
作品には自分の持ち味や得意技を50%以上の形で盛り込むこと。 いくらクライアントの要望だからといって、全て鵜呑みにすると、間違った方向に進んでしまうだけでなくてデザイナーに頼んだ意味もなくなってしまう。これはデザイナーとして守るべき倫理・境界線。
感想
「電車のデザイン」で水戸岡鋭治さんの考え方や仕事の姿勢がとても好きだったので2冊目。 こちらの方がデザインに関することが多く書いてあり、目から鱗なことがたくさん書いてあった。
真似したいことは、
- 作法を身につける
- 51対49のデザインの法則
- 作業を始めたら他の作品を見ない
- 五感フル活用生活
作法の部分は特に意識しないとなぁと思った。だらしない人に素晴らしいものが作れるわけがない。ちゃんとた人間になりたい...